研究概要 |
1)ヒト気道上皮培養細胞にはヒト間で流行しているインフルエンザウイルス(IFV)のシアロ糖鎖受容体(sialylα2-6Gal-)の他に、高病原性鳥IFVの受容体(sialylα2-3Gal-)も存在することを見いだした。さらに、ニワトリ、ウズラの腸管におけるシアロ糖鎖の分布を、シアル酸-Galを識別できるレクチン染色、腸管細胞におけるヒトウイルスの増殖性、シアロ糖鎖プローブを用いた化学的解析により、sialylα2-6Galおよびsialylα2-3Galの両者が存在することを解明した。この結果から、高病原性トリインフルエンザウイルスは、ニワトリやウズラなどの家禽の間で流行を繰り返す過程でヒトレセプター(α2-6)と結合できる新型ウイルスに変異する可能性が明らかとなった。 2)現在流行している高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播を可能とする変異を監視する新しい技術を開発した。本方法は、高価な機器を用いないので、高病原性トリインフルエンザが実際、発生している東南アジア諸国でも、現在流行している高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播を可能とする変異を監視できるものであり、今後の有効利用が期待される。3)高病原性トリインフルエンザウイルスがヒト世界でパンデミックを起こすウイルスに変異するための分子変異シグナルを同定した。すなわち、様々な分離高病原性トリインフルエンザウイルス、その変異ウイルスを用いて、高病原性トリインフルエンザウイルスヘマグルチニン分子内のわずか1〜2ヶ所のアミノ酸置換がヒト気道上に存在するシアロ糖鎖受容体認識に関わることを発見し、そのアミノ酸(182,192,139番目など)を同定した。これらの成果により、パンデミック発生を事前に予知出来ることが初めて可能となった。
|