研究課題
生活習慣病の克服には、脂肪細胞肥大化の研究と並び、脂肪細胞分化機構の解明も重要な課題である。我々は、すでに脂肪細胞分化の最も初期において発現が変動する遺伝子群を多数単離し、これらが脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。本年度は、新たな因子も含めさらに解析を進め、以下の結果を得た。インプリンティング遺伝子であるpeg10(paternally expressed gene 10)を新たに同定した。peg10は、C/EBPβ遺伝子やC/EBPδ遺伝子の発現を制御することにより、clonal expansionを制御し、その結果として脂肪細胞分化を正に制御することを明らかとした。cyclin D2は、cyclin D1及びD3と共にファミリーを形成しており、G1期からS期移行に重要な役割を果たしていることが知られている。これらは、分化誘導後12時間後に発現上昇が認められ、この発現上昇が脂肪細胞分化特異的である可能性が示唆された。また、この発現上昇はclonal expansionの直前で認められたことから、cyclin Dはclonal expansionの制御を介して、脂肪細胞分化を制御する可能性が考えられた。新規遺伝子としてfad49(fad; factor for adipocyte differentiation)を新たに単離し、この因子も脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることが明らかとした。fad49はスキャフォールド機能を有し、種々のシグナル伝達ネットワークに密接に関与している可能性が強く示唆された。以上、脂肪細胞分化の初期に機能し重要な役割を果たすと考えられる因子群を多数分離同定解析した。今後さらに詳細な解析を行うことにより、新たな治療薬開発への足掛かりとなることが期待される。
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