研究課題
ラミニン由来の活性ペプチドの同定と、それらが器官発生、神経再生、創傷治癒などの高次生命現象に及ぼす役割を解明し、細胞特異的に働く活性ペプチドを医薬分野などに応用するための基盤づくりを目的に研究を行った。本年度は、神経や筋組織に多く存在するラミニンα2鎖のα-ジストログリカン結合配列を組換えタンパクと約50種類の合成ペプチドを用いて同定し、米国細胞生物学会など5回にわたり学会発表した(現在論文投稿中)。難治性疾患の筋ジストロフィーはラミニンα2鎖とα-ジストログリカンの結合異常がひとつの原因とされており、これらのペプチドが病態解明や治療薬の開発に寄与するものと期待される。また、ラミニン活性ペプチドの医薬分野への応用をめざし、インテグリンとシンデカンの2種類のペプチドを用いこれらを混合してキトサン膜に固定化し、両方の受容体に作用するペプチドーキトサン膜を作成した。2種類のペプチドの混合比により、細胞接着や神経突起伸長などの生物活性が異なることを見いだし、Biomaterials誌に論文発表し、欧州ペプチド学会など数回にわたり学会発表した。これらの結果は、複数のペプチドを用いて2種類のレセプターの相互作用を誘発させた最初の例でテーラーメイド型医用材料に新しい方向性を示すものである。さらに、成体において最も多く存在するラミニンα5鎖由来の113種類のペプチドの中で表皮細胞に最も強く接着するペプチドを同定し、それを用いてペプチド-キトサン膜を作成し、ヒト表皮細胞の移植実験を行ったところ、効率よくヒト表皮細胞がヌードマウスに移植でき、創傷治癒を促進することを見いだし、Wound Repair Regeneration誌に論文発表し、数回にわたり学会発表を行った。本結果により、ペプチド-キトサン膜の医用材料としての実用化の可能性が示された。
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http://www.ps.toyaku.ac.jp/~nomizu/