本研究は、セカンドメッセンジャーとして未だ不明な点の多いcADPRが関与する情報伝達機構を開明のためのツールとして有用な機能分子、さらに創薬リード化合物となりうるcADPR類縁化合物の創製を目的とする。 申請者らは、cADPR の安定等価体としてサイクリック ADP-カーボサイクリックリボース(cADPcR)を既に開発した。cADPcR は、ウニ卵、神経細胞においてはcADPRを凌駕する強力なCa^<2+>動員活性を示すが、T-細胞ではほとんど活性を示さない。この原因をアデニン部のpKa値またはカーボサイクリックリボース部のコンホメーションにあるものと推論し、T-細胞でも有効な類縁体として、N1-4-チオリボース体及びN1-不飽和カーボサイクリックリボース体を設計した。 N1-不飽和カーボサイクリックリボース体の合成を完了したので、今年度はN1-4-チオリボース体の合成に焦点をあてて研究を進めた。その結果、基本骨格であるN1-4-チオリボシルアデノシン構造を構築し、さらに鍵段階の大環状構造の構築に成功したので、あとは脱保護を残すのみとなった。合成完了後、生物学的評価を検討する予定である。
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