本研究は、ピリジンとキレート性側鎖からなる亜鉛配位子に蛋白質認識部位を導入するという分子設計にもとづき、亜鉛蛋白質の阻害剤の合成研究を行うものである。亜鉛蛋白質としてファルネシルトランスフェラーゼとADAMファミリープロテアーゼをとりあげこれらの阻害剤の分子設計を行うことが本研究の目的である。 平成17年度は亜鉛蛋自質ファルネシルトランスフェラーゼの阻害剤の合成研究を行い、最終段階まで到達した。平成18年度にはADAMファミリープロテアーゼの阻害剤の合成研究を並行して行い、平成19年度はこれを継続した。 本研究ではADAMファミリープロテアーゼ認識部位として、ADAM30阻害剤marimastatのヒドロキサム酸以外の部位を用いるという分子設計を行った。すなわちD-酒石酸を対応する2、3-エポキシドに立体選択的に導き、これにイソブチル基を導入した。さらにtert-ロイシン部分を連結してmarimastatに対応する部位を適切な保護基を導入したかたちで合成した。一方、ピリジンとキレート性側鎖からなる亜鉛結合部位は、ケリダム酸を出発原料とし、4-アジドピリジン-2、6-ジカルバルデヒドに導き、アルデヒド部分を2-アミノエタンチオールと反応させキレート性側鎖部位チアゾリジンを形成し、同時に4-アジド部位をアミノ基へと変換した。このピリジンアミン化合物と上記のmarimastat部位との結合を試みた。
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