研究概要 |
医薬品や環境ホルモンなどの合成化学物質のより精確な毒性評価系の構築を最終目的として、人と同じく霊長類に属するサルの薬物代謝酵素の諸性質を解明するための一環として、肝組織を使った様々な化学物質の代謝反応をヒト、カニクイザル、ニホンザル並びにマーモセットで比較すると同時に、サルの肝臓におけるシトクロムP450(CYP)及びグルクロン酸転移酵素(UGT)の分子種をコードするcDNAのクローニングを進めた。その結果、ニホンザル及びカニクイザルの肝臓から、それぞれCYP1A2をコードするcDNAのクローニングに成功し、その酵素化学的特性の違いを明らかにした(S.Narimatsu et al.,Chemico-biol, Interact.,152,1-12,2005)。また乱用性薬物の毒性評価の一環として、脱法ドラッグの一つ、5-Methoxy-N, N-diisopropyltryptamine(Foxy)の代謝反応を人肝臓のミクロゾーム画分とrecombinant CYP分子種で検討したところ、主要な代謝反応はCYP2D6による5位脱メチル化反応とCYP1A2やCYP3A4による側鎖脱イソプロピル化反応であった(S.Narimatsu et al.,Biochem, Pharmacol.,71,1377-1385,2006)。現在、カニクイザルやマーモセットの肝ミクロゾーム画分やリコンビナントCYP分子種による検討を進めている最中である。さらに人肝臓癌由来細胞に対してCYPやUGT分子種をコードするcDNAを導入した化学物質毒性スクリーニング系開発の試みにおいて、ヒトCYP2D6野生型とその主要な変異型とヒトNADPH-CYP還元酵素を安定発現させたHep G2細胞系を樹立した(S.Narimatsu et al.,Chemico-biol.Intract.,159,45-57,2006)。
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