研究概要 |
マーモセットの肝臓からヒトCYP2C8の塩基配列に基づいて調製したプライマーを用いてRr-PCRにより新規CYP2C酵素をコードするcDNAをクローニングした。その塩基配列から推定したアミノ酸配列はヒトCYP2C8と87.1%の相同性を示した。このcDNAを組み込んだプラスミドpGYRIで酵母細胞を形質転換し、発現した酵素タンパク質の酵素化学的性質を検討した結果、活性中心空洞の形状や基質特異性は、ヒトCYP2C8よりもむしろCYP2C9やCYP2C19に類似することが明らかとなった。 カニクイザルの肝臓からはヒトUGT1A6の相同酵素をコードするcDNAをクローニングし、酵母細胞に酵素タンパク質を発現させ、その酵素化学的特性をヒトUGT1A6と比較すると共に、内分泌撹乱性化学物質bisphenolA (BPA)とヒトおよびカニクイザルUGT1A6酵素の相互作用について検討した。その結果、ヒトとカニクイザルUGT1A6酵素は,アミノ酸配列の相同性は極めて高いが,酵素化学的特性に相違点があることが明らかとなった。また,in vitro系においてUGT1A6はBPAにより阻害を受け,酵素機能変化の程度もヒトとカニクイザルでは異なることが示唆された。 さらにReal Time-RTPCRにより、ヒトの凍結肝細胞培養系に代表的CYP誘導剤を添加してハウスキーピング遺伝子mRNAの変動を検討し、β-actin (ACTB)に加えてhypoxanthine phosphoribosyltransferase 1(HPRT1)が指標として適当であることを見出した。現在、マーモセット及びカニクイザルの肝臓における上記酵素を含めたCYP分子種やUGT分子種の発現や誘導に係わる核内レセプターの遣伝子クローニング並びにその役割の検討を進めているところである。
|