液性免疫のみならず細胞性免疫をも誘導できるDNAワクチンのアプローチは、近年、細菌やウイルス感染症、がん、免疫疾患等さまざまな疾病に対する新たな治療法として期待されている。しかしながら期待どおりの成果が挙げられているとは言いがたく、DNAワクチン療法の最適化が望まれている。そのためには、DNAワクチンの効果発現を最大限に引き出すことを可能にするプラスミドDNAのデザインとデリバリーに関する情報の蓄積が重要な課題である。そこで本研究では、DNAワクチンの効果発現において重要な役割を果たしている樹状細胞とプラスミドDNAの相互作用に関する情報を得るために、naked DNAあるいはカチオン性リボソーム複合体の形で取り込ませた場合の活性化を、マウス樹状細胞を用いて検討した。その結果、いずれの形態で取り込ませた場合も、樹状細胞の活性化はプラスミドDNAに含まれるCpGモチーフに依存して起こることが明らかとなり、既に明らかにしているCpGモチーフ非依存的な活性化を示すマクロファージとは異なる特徴を有することが示された。一方、DNAワクチンのデザインに関しては、細胞性免疫を誘導できることが知られている分子シャペロンheat shock protein70(Hsp70)を基盤とした新規DNAワクチン設計を試みた。細胞内動態を制御することのできるHsp70-抗原融合タンパクをコードするプラスミドDNAを設計し、エレクトロポレーションを併用してマウスに皮内投与した際の免疫応答を評価した。その結果、強力な抗原特異的な細胞傷害性T細胞活性と抗腫瘍効果を誘導できることが明らかとなった。以上、本研究では樹状細胞とプラスミドDNAの相互作用に関して検討すると共に、Hsp70を基盤とした新規DNAワクチン設計を試み、いくつかの重要な基礎的知見を得ることができた。
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