研究概要 |
ガレクチン(以下Gal)はβ-galactosideを認識する内在性のレクチンで、細胞の分化や増殖、アポトーシスを調節するほか、脂質ラフトの安定化を介して細胞内シグナル伝達系に関与する。哺乳類では、15種類のサブタイプが報告されており、組織・細胞特異的に生体内に広く存在する。本研究では、ガレクチンが最も豊富に存在する消化管と泌尿生殖器系に注目し、発現解析を細胞レベルで行った。消化管では5つのサブタイプ(Ga12,3,4/6および7)が粘膜上皮に特異的に発現していた。腺胃では、Ga12とGa14/6が主要なサブタイプで、腺頚部から胃小窩にかけて分布する粘液細胞に存在した。小腸では、Ga12,3および4/6が上皮の成熟度に応じて発現していた。大腸では、Ga14/6が主要なサブタイプで、陰窩全体に強く発現しており、陰窩上部ではきらにGa13も発現していた。口腔から前胃と肛門では重層扁平上皮にGa17が発現した。消化管を通じていずれかのガレクチンサブタイプが途切れることなく発現し、サブタイプの発現様式には一定のパターンがあることがわかった。一方、泌尿器の主要なガレクチンはGa13で、腎臓から尿道まで連続して発現していた。泌尿器におけるGa13は尿管芽と尿生殖洞由来の上皮に存在し、これらのマーカーになるといえる。雌の生殖器でもガレクチンは随所に発現するが、卵巣ではGa13とGa11のみが発現し、黄体がそれらの主要な産生組織であった。黄体のガレクチンは退行期の黄体に特異的に発現し、Ga13はプロジェステロン分解酵素と密に相関することから、機能的退行の維持に関与し、一方Gal1は黄体退行の開始(誘導)に関与すると結論された。ガレクチンは、上皮の恒常性維持や感染、免疫などにおける働きが注目されているが、正常組織におけるガレクチンの細胞およびステージ特異的な発現に関する情報は、ガレクチンの機能や病態における役割を理解する上で重要である。
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