研究概要 |
脂質滴は哺乳類の細胞に普遍的に見られる.トリグリセリドやコレステロールエステルなどがコアとなり,コレステロールを含む燐脂質一重層が周囲を覆う構造である.脂質滴表層にはADRP,TIP47の他,我々が昨年度までの研究で同定したRab18などが局在する. 1.脂質滴は他のオルガネラと異なる性質を持ち,その構成蛋白質を免疫組織化学的に検出するためには固定,透過性処理などの条件に特別な注意が必要であることを明らかにした. 2.肝細胞のリポ蛋白質形成過程では,脂質滴に由来する脂質がApoBに付加され,過剰なApoBは複数の経路で分解される.我々は肝由来のHuh7細胞などで,脂質滴を三日月状に囲むApoB(ApoB-crescent)を発見した.ApoB-crescentはプロテアソームあるいはオートファジーの阻害で顕著に増加した.脂質滴画分にはApoB,プロテアソーム,ポリユビキチン,ポリユビキチン化ApoBが見られ,プロテアソーム阻害で増加した.免疫電顕によりApoB-crescentは脂質滴に近接した脂質性顆粒の集積であることが分かった.これらの結果は,脂質滴表層は分解を受けるApoBが貯留する場であること,貯留したApoBはプロテアソーム系,オートファゴソーム/リソゾーム系の両方によって分解を受けることを示唆した. 3.TIP47はADRPと異なり,脂肪酸負荷時などに顕著に脂質滴に集中する.変異体の解析により,TIP47のC末部分で形成される疎水性ポケットが脂肪酸に対する反応に係わることを明らかにした.
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