研究概要 |
脂質滴は過剰な脂質をエステルとして貯蔵するだけでなく,種々の細胞機能に積極的に関与するオルガネラであることが明らかになってきた。我々はHuh7,HepG2などの肝細胞由来株ではApolipoprotein B100 (ApoB)が脂質滴周囲に半月状の構造(ApoB-crescent)を形成することを見出した.ApoB-crescentはALLN,MG132,lactacystinでproteasomeを阻害した場合,あるいは3-MAなどでautophagyを阻害すると著明に増加するため,ApoBの分解処理に関わる構造であると考えられた.精製した脂質滴にはproteasomeの複数のサブユニットが回収され,また蛍光抗体標識により脂質滴周囲にproteasomeの存在が認められた.またproteasome阻害時の脂質滴画分に回収されるApoBは高度にユビキチン化されていることが確認された.一方,proteasome阻害によりautophagic vacuoleのマーカーであるLC3陽性の構造が顕著に増加し,一部はApoB-crescentの近傍に認められた.leupeptinなどでリソソームの加水分解酵素を阻害した細胞ではlamp1陽性の構造に含まれたApoB-crescentを認めた.肝細胞のリポ蛋白質形成過程では,脂質滴に由来する脂質がApoBに付加され,過剰なApoBが複数の経路で分解されることが知られている.我々の上記の結果は,細胞内で分解処理されるApoBの少なくとも一部が脂質滴近傍1に集積し,proteasome,autophagyの両方で処理されることを示唆した.
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