研究課題
基盤研究(B)
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)/Edg受容体システムの心血管における生理機能および心血管系および腫瘍における病態生理的役割を様々な遺伝子改変マウスを用いて解析し、さらにヒト疾患モデルを作成して治療法開発のための基礎研究を行った。S1P受容体のひとつであるEdg5は、血管壁では主に平滑筋に発現している。Edg5ノックアウト(KO)マウスは野生型マウスに比較して低血圧を示した。アンギオテンシンII・ACTH負荷、NO合成酵素阻害薬負荷に対する昇圧反応には差異が見られなかった。現在、マウス血管のRho経路の活性を検討中である。マウス後肢虚血モデルにおいて野生型マウス虚血局所へのS1Pの投与は虚血後血管新生を促進して血流回復を早めた。また、S1P産生が亢進しているスフィンゴシンキナーゼ(SphK)トランスジェニック(Tg)マウスでは野生型マウスに比して虚血後血管新生が促進していた。また、インビトロ管腔形成アッセイでEdg5受容体遮断はS1Pの血管新生作用を増強した。Edg1を過剰発現するEdg1-Tgマウスが生後3カ月より進行性の心肥大を呈することを見い出した。心筋細胞ではEdg1発現が亢進しており、ERKリン酸化も増加していた。また、心肥大はアンギオテンシンIIシグナルに依存していた。Edg5を介した癌(B16)細胞遊走抑制はRhoに依存していたがRhoキナーゼには依存せず、またPTENを必要としなかった。Edg5は同細胞のフィブロネクチンへの接着を強く抑制した。宿主Edg1受容体の活性化が癌細胞の尾静脈注入後肺転移を促進することを見いだした。以上の結果は、S1P/Edgシステムが血圧調節などの心血管ホメオスターシスや心肥大・血管新生・腫瘍転移などの病態生理において重要な役割を有していることを示して+おり、S1P/Edgシステムを標的とした治療が有効である可能性を示唆する。
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