研究概要 |
観察装置の新しい特徴として,エバネッセント光の深達度を減衰定数の大きさとして理論的に推定できるようにして,開口放出の観察を行った。顆粒の反応が起こる位置を推定しながら,その反応パターンとの相関性を解析した。また,フラッシュ反応に対する顆粒内部のpHの効果を調べた。 アドレナリン分泌性細胞について,細胞外液のpHの効果を調べたところ,エバネッセント光照明下で見られるフラッシュ型の反応パターンには変化が認められなかった。したがって,フラッシュのように,ほぼ暗黒に突然輝点が生じるのは,顆粒の開口で顆粒内pHが上昇したためではないことが結論された。しかし,INS-1細胞において,エバネッセント光の深達度を交互に急速に変える方法で,観察すると,素早い移動を示してから開口放出に至るものが認められ,フラッシュはその移動による輝度増大を含むものであると結論された。細胞のガラス面に接着していない側の表面においても開口放出を見る方法として,エバネッセント光そのものは適当でなく,いくつかの方法を試みたところ,OCTに類似の十字光束型の干渉法が使えることが分かった。この方法でインスリン分泌性細胞と,INS-1細胞を観察するとガラス基質反対側の表面でも,顆粒内容の放出が多数起こることが分かった。開口放出の反応パターンは,ガラス基板側で放出されるものに比べて,大きなクレーターができない特徴が見られたことから,比較的広い(水中の)空間に放出される場合は水の放出があっても,自由に流れ出ることで細胞内部への圧上昇はないことを示している。これは,逆に,ガラス板上で反応した時のクレーター生成は,水の噴出が自由空間に放出されにくいために起こることを示していると,結論した。
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