研究概要 |
Naチャネルに特異的に作用するシガトキシン類は分子量がおよそ1000で13個の環状構造(A〜M環)がつながった比較的固い構造をもち,脂溶性が高い。そのようなトキシンがNaチャネルの機能を修飾する作用を有するにはシガトキシン分子がNaチャネル分子にどのような機構で結合するのかを突き止めることは大変重要と考える。Naチャネルを含む電位依存性チャネルはもっぱらKチャネルの結晶構造解析によって電位センサー部分とイオンを通す部分(ポア部分)が互いに比較的独立したユニットとして振る舞うことが予想されている。本研究で示したようにCTX3CのB環部分にビオチンを付加すると機能しなくなること,また対側のM環にOH基を付加することがシガトキシンの機能に影響も与えないことから,A-B環側が官能基として重要であることがわかった。さらに中間に位置するF環の構造が本来9員環から8または10員環にすることでも大きくシガトキシンの能力の低下が見られた。F環の構造がA,B環の位置を変化させることがその原因と考えられた。またCTX3Cはテトロドトキシン耐性で侵害受容を司るNa_v1.8にテトロドトキシン感受性のNa_v1.4やNa_v1,2に比べ特異的に強い修飾作用を有し,その作用部位がドメインIIに位置することが示された。このことはシガトキシンによる食中毒(シガテラ中毒)が異常感覚や痛覚過敏を引き起こす理由を説明するとともに,Na_v1.4とNa_v1.8のキメラの実験からそのシガトキシン感受性はNav1.8のドメインII(DII)部分が関係することがわかった。すなわちシガトキシンはDIIの電位センサー部分とポア部分をつなぐどこかのサイトに脂質膜からのルートを通り結合しチャネルの閉状態を不安定化させることが推測された。
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