研究概要 |
イオンチャネル立体構造のおおよそのイメージはもっぱらMackinnonら(2003)によるKチャネルの結晶構造解析から得られた。すなわち電位センサー部分がホアの外側の脂質膜部分に位置し電位に影響を受け浮動しながら,イオンを通す部分(ホア部分)と互いに比較的独立したユニットとして振る舞うことが予想されている。Naチャネルに特異的に結合するシガトキシンは分子量がおよそ1000で13個の環状構造(A〜M環)がつながった比較的固い構造をもち,脂溶性が高い。そのような毒はおそらく電位センサー部分に脂質膜側からアクセスしNaチャネルの機能を改変するであろう。従ってシガトキシンとNaチャネルの相互作用を明らかにすることがNaチャネルの立体構造を機能的に解明することに至ると考え研究を遂行した。その結果以下の4つのNaチャネルの構造に関する重要な所見が得られた。 1.CTX3C(合成シガトキシン類の1つ)は4つあるドメインの電位センサーのうちDII(ドメインII)に特異的に作用することがわかった。2.B環ビオチン付加CTX3CやM環にOH基を導入した51-OH-CTX3Cの実験からA-B環側がNaチャネルに対する官能基として重要であることがわかった。3.CTX3C構造の中間に位置するF環を本来の9員環から8または10員環にすることでシガトキシンの能力の大きな低下が見られた。F環のわずかな構造変化がA,B環の位置を大きく移動させることがその原因と推測される。4.CTX3Cはテトロドトキシン耐性で侵害受容を司るNa_v1.8のDIIに特異的に作用し異常感覚や痛覚過敏を引き起こすようなNaチャネルの機能改変を引き起こすことがわかった。以上の結果から今後はさらにDIIの電位センサー部分とポア部分をつなぐサイトに注目し脂質膜からのシガトキシンがアクセスする様子を具体的に明らかにしてゆきたい。
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