研究概要 |
本研究の大きな目的は体温の概日リズムの形成メカニズムを明らかにする事であった。具体的には(仮説1)体温調節は中枢、末梢2つの部位の温度情報に基づき体温調節反応を行っているが、生物時計の最上位中枢である視交叉上核はこの温度情報の感受性を変化させ体温調節反応の時間差を発生させる、(仮説2)体温のリズムは中枢-末梢間での遺伝子発現の同調にかかわっている、の2つの仮説を検証した。マウスに自由摂食もしくは48時間の絶食を行った上、20℃の中等度寒冷負荷を行い、代謝、褐色脂肪組織のUCP1mRNA発現を調べた。さらに脳視床下部でのcFos発現を指標にまた時計遺伝子の1つであるClock遺伝子のミュータントマウスを用いて同様の実験をおこなった。まず自由摂食下には熱産生反応の昼夜の差は認められず視床下部でのcFos発現も著明ではなかった。一方絶食時には活動期である夜間のみ積極的な熱産生反応が見られた。この際,視交叉上核に昼間特異的なcFosの著明な発現増加が認められた。さらに視交叉上核と交感神経にかかわる室傍核の間には機能的連絡があり抑制性のニューロンを介している事が明らかになった。視交叉上核は温度、摂食情報を受容している,あるいは感受性を変化させ体温調節の時間依存性を形成していると考えられた。
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