研究概要 |
遺伝子翻訳後、形成された蛋白質は様々に修飾されたり、他の蛋白質と相互作用したりして、多様な機能・特性を表現できる分子型・イソフォームへと変換していると考えられます。私たちはそれらを一括してファルマコームと呼び、このファルマコーム解析こそ、ポストゲノム創薬の中心になると考えました。本研究は、α1-アドレナリン受容体についてファルマコーム解析を行ったものであり、以下の成績を得ました。 1.下部尿路系において、従来のα1-アドレナリン受容体(α1A, α1B, α1D-AR)とは異なる、prazosinに低親和性のα1-アドレナリン受容体が存在することを発見し、この受容体をα1L-ARと呼ぶことを提唱しました。 2.α1L-ARは、これまで機能実験だけでしか見つかっていませんでしたが、結合実験において、従来のα1-アドレナリン受容体とは別の結合部位として同定しました。 3.α1L-ARは、組織がインタクトな場合にのみ検出され、ホモジナイズするとその薬理学的特性はα1A-ARに変化しました。この結果は、α1L-ARがα1A-ARと関連する受容体であることを強く示唆しました。 4.そこで、ノックアウトマウスを用いて検討したところ、α1A-ARのノックアウトでα1L-ARも同時に消失していることを発見しました。 以上の結果から、α1L-ARとα1A-ARの特性は異なりますが、どちらもα1A遺伝子由来であることが明らかになりました。すなわち、同一遺伝子から2つの異なった受容体(表現型)が発現していることが、本研究により初めて証明されました。
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