研究概要 |
本年度は、心筋梗塞後キマーゼの血管新生における役割の解明を目的に実験を行った。ハムスターおよびイヌの心筋梗塞モデルは、ペントバルビタール麻酔下で左冠動脈を結紮することにより作製した。ハムスターモデルを用いて心筋梗塞作製前、心筋梗塞作製後1,3,7日において心臓を摘出し、心臓におけるキマーゼ活性、アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2活性、MMP-9活性を測定した。キマーゼ活性は、心筋梗塞後1日より10倍近く顕著に活性が増加し、その後、徐々に低下した。ACE活性は心筋梗塞後3日より有意な増加が見られた。一方、MMP-2活性は心筋梗塞後3日より、MMP-9活性は心筋梗塞後1日より有意に増加した。キマーゼ活性およびMMP-9活性は、心筋梗塞後4、8、12時間の急性期の解析を行い、両活性が心筋梗塞後8時間において有意に増加することが判明した。これらの結果は、心筋梗塞直後の極めて急性期にキマーゼ活性およびMMP-9活性が梗塞部位において重要な役割を担っている可能性を示唆する。免疫染色の実験結果は、MMP-9の発現細胞のほとんどが好中球であることを示していた。キマーゼ活性の増加は、アンジオテンシン(Ang)IIの産生増加ならびにMMP-9活性の増加は血管新生において極めて重要な役割をもたらすことが知られている。AngIIは、直接血管新生を促し、MMPはその発生進展に不可欠である。イヌのモデルでは、MMP-9の前駆物質がイヌ精製キマーゼにより直接活性化されることを明らかにした。これらの結果から、内因性のキマーゼが心筋梗塞後急性期にAngIIおよびMMP-9活性増加を介して血管新生に寄与する機序を明らかにできた。さらに、精製ハムスターキマーゼ、イヌキマーゼの心筋梗塞後直後投与による病態への影響とキマーゼ阻害薬の効果の検討を発展継続している。
|