研究課題/領域番号 |
17390071
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
筒井 正人 産業医科大学, 医学部, 助教授 (70309962)
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研究分担者 |
下川 宏明 東北大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00235681)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 教授 (80140896)
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キーワード | 一酸化窒素合成酵素 / マウス / 遺伝子改変 / 一酸化窒素 / ノックアウト / 動脈硬化 / 尿崩症 / メタボリック症候群 |
研究概要 |
一酸化窒素合成酵素(NOS)には、神経型(nNOS)、誘導型(iNOS)、内皮型(eNOS)の3種類の異なったアイソフォームが存在する。これまでに、各NOSの役割が、NOSアイソフォーム欠損マウスを用いて広く研究されてきた。しかし、各NOS間には代償機構が働くために、NOSsシステム全体に由来するNOの究極の役割については未だ十分に解明されていない。この点を検討するために、我々は、3つのNOSsがすべて欠失したN0S完全欠損マウス(トリプルNOSS欠損マウス)を世界で初めて創出した(PNAS2005)。本研究では、このマウスにおける表現型を解析した。 このマウスは胎生致死ではなく誕生したが、生存率は野生型マウスに比して著明に低下していた。死因の病理学的検索では、トリプルNOSs欠損マウスの実に半数以上が自然発症の心筋梗塞で死亡していた。さらに、このマウスには、内臓肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能異常、インスリン抵抗性などのメタボリックシンドロームの病態がすべて揃って認められた。重要なことに、トリプルNOSs欠損マウスの血管や心臓にはレニン・アンギオテンシン系の活性化が認められ、さらに、アンギオテンシンII1型受容体(AT1)拮抗薬の長期投与によりこれらの病態はすべて有意に改善した。従って、当該病態の成因にはAT1を介した機序が関与していることが示唆された。また、このマウスには、腎臓機能障害、心臓機能障害、消化管機能異常、骨代謝異常や中枢神経系の異常などの多彩な表現型も見出された。 以上、研究代表者は、平成18年度において、全NOSシステムに由来する内因性Noが、循環器系、内分泌代謝系、消化器系、骨代謝系、中枢神経系などの様々な生体機能調節に重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。平成19年度はこれらの研究を継続するとともに、新たに新規治療法の開発を目指した基盤研究を展開する予定である。
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