研究概要 |
血管内皮細胞は、HLHタンパク質であるId1またはHerp2により血管新生の指標となる細胞遊走能をそれぞれ促進または抑制することをすでに見出していた。そこで、酵母two hybrid法により、Id1またはHerp2に結合し、Id1またはHerp2の機能制御を行うタンパク質の単離を試みた。その結果、約20個の陽性コロニーを得た。得られた約20個の遺伝子の全長を用いてCOS細胞でId1またはHerp2と結合する分子を選択したところ、E2-2、Id2、CGI-128、FHL2、FLJ13861がId1またはHerp2と結合することを認めた。そこで、まずE2-2に着目し、これまで私達が血管新生を制御している転写因子群として注目していたId1、Herp2、LMO2、SCL、E2Aに対する結合能の違いをCOS細胞で検討したところ、E2-2は、Id1、SCL及びE2Aとヘテロ複合体を形成すること、さらにE2-2自身ホモ二量体を形成することを明らかとした。また、E2-2によって活性化されるプロモーターを用いて、E2-2に対するId1とSCLの影響を調べてところ、Id1及びSCLは共に、E2-2で活性化されるプロモーター活性を抑制することを明らかにした。Id1のパートナーとして単離したE2-2が血管内皮細胞活性化作用を持つId1と異なり血管内皮細胞の活性化を抑制していることを血管内皮細胞の増殖アッセイや管腔形成法により、認めている。このE2-2の作用機序として、血管内皮細胞活性化時に発現が上昇することの知られているVEGFRの発現を転写レベル抑制し、Id1がそれに拮抗して働いていることをルシフェラーゼレポーターを用いたアッセイにより明らかにした。 TGF-β I型常用体(ALK5)の点変異導入ノックインマウスの作製を試みた。このマウスは、TGF-β/ALK5/Smad2,3シグナル伝達系が全く伝達されず、TGF-β/ALK1/Smad1,5,8シグナル系のみが伝達されることにより、胎仔期での血管形成がALK5ノックアウトより改善されると期待された。得られた、ALK5ノックインマウスは、胎生10.5日頃に死んでしまうことがわかった。ALK5ノックインマウスの胎仔羊膜上に血管形成が全く起こっておらず、そのため血液が胎仔内に流れず、致死に至ると考えられた。この表現系は、ALK5ノックアウトマウスと類似していた。一方、胎盤におけるラビリンス形成において、ALK5ノックインマウスは、野生型マウスと同様に血管形成が行われていたが、ALK5ノックアウトマウスの胎盤では、ラビリンス形成異常が認められた。
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