研究概要 |
相同組み換えは約30種の分子が関与する複雑な生化学反応である。試験管内では全反応過程を再現できていない。主に遺伝学的手法でこれまで10数種の組み換え因子が同定された。 標的組み換えを含む相同組み換えの律塞段階は、(1)相同配列どうしが相互認識するステップと、(2)認識しあったあとに損傷DNAがもう一方の正常な相同配列を鋳型にしてDNA合成するステップの2つである。相同組み換えにおいて(2)DNA合成のステップに関与するDNAポリメラーゼは不明のままである。 polζと呼ばれるDNAポリメラーゼは、Rev1/Rev3/Rev7と呼ばれる3種類の分子からなる。これらの分子の酵母ホモログは、3種類の分子が常にいっしょに機能する。我々は、Rev1/Rev3/Rev7の機能的相互関係を調べるために、rev1遺伝子欠損細胞(別のグループが作製済み)を新たに作り直し、さらにrev7遺伝子欠損細胞を新規に作った。さらに、Rev1/Rev3/Rev7 3重遺伝子欠損細胞も作製した。これらの細胞の解析から、(i)DNA損傷に対する応答では3種類の分子が共同して機能する、(ii)3者が損傷乗り越えのみならず一部の相同組み換えにも関与する、(iii)抗体遺伝子の相同組み換えによる多様化に関してはRev1のみがおそらく他のDNAポリメラーゼと共同して機能する、の3点が解明できた(Okada T. et al.,2005)。polκ/polζ2重欠損株を作製し、両者の機能的相互作用も明らかにできた(Takenaka K. et al.,2006)。
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