研究課題
真核細胞は遺伝情報を、安定に保ち、正確に発現すなわち細胞分化を維持する機構の1つとして、クロマチンと呼ばれるDNA高次構造を保持している。この研究の目的は、DNA高次構造変換の観点から遺伝子転写や分化の調節機構を解明することである。我々の見つけたリン酸化酵素NHK-1はヒストン単独では活性を全く示さないが、クロマチン中のヒストンは強くリン酸化する。さらにこのリン酸化酵素はヒストンH2AのC末端119番目のトレオニンを選択的、特異的にリン酸化する。ヒストンH2Aユビキチン化とヌクレオソーム特異的ヒストンリン酸化酵素Nucleosome Specific Histone Kinase-1(NHK-1)のクロストークを中心に解析した。ヒストンは非特異的なリン酸化の基質にも使われ程リン酸化されやすい蛋白であるが、申請者が同定したリン酸化酵素NHK-1は遊離のピストンは全くリン酸化しないが、リコンビナントNAP-1とリコンビナントACFでクロマチンを形成するとヌクレオソーム中のヒストンをリン酸化する。さらに基質特異性が強くH2A119番目のトレオニンのみをリン酸化する。しかしH2A118番目リジンのユビキチン化を伴うとこのリン酸化は完全に抑制された。H2A118番目リジンのユビキチン化に対する抗体を作成し、免疫沈降するとこのユビキチン化は遺伝子転写抑制と密接に関係していることが明らかにした。すなわちH2A118番目のリジンのユビキチン化ヒストン蛋白に対する抗体および試験管内再構築実験により、H2A119番目トレオニンのリン酸化とH2A118番目リジンのユビキチン化におけるクロストークとその生理学的な意義の一端を明らかにした。
すべて 2006
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