研究概要 |
本研究では,以下の実験を実施した. 1.Nrf2に相互作用する因子の同定:Nrf2に特異的に相互作用する因子として,TIF1β,TIF1γ,BAF53,TRRAPを同定した.また,免疫沈降実験により,BAF53を含むクロマチン構造変換複合体の中心サブユニットであるBRG1とNrf2が相互作用することを見いだした.BRG1のノックダウンおよび一過性過剰発現実験から,BRGIはHO-1遺伝子の発現を選択的に増強することを発見した.さらに,HO-1遺伝子の発現増強には,BRGIによるHO-1遺伝子プロモーター近傍のZ-DNA形成が重要であることを解明した.Nrf2転写制御メカニズムを解析するため,FLAG標識したNrf2,転写活性化ドメインNeh4およびNeh5の欠損変異体,各種アミノ酸変異体をテトラサイクリン誘導性に発現する細胞株を構築し,これらの細胞株を用いて,Nrf2と上記の相互作用因子との結合能,その転写活性化への影響を解析した. 2.Nrf2が転写応答する場の同定および解析:Nrf2転写応答における相互作用因子の影響を調べるために,TRRAPおよびBRG1のノックダウン細胞を作成し,Nrf2標的遺伝子座へのリクルートをクロマチン免疫沈降法により検討した.TRRAPノックダウン細胞では,Nrf2のARE配列へのリクルートが増強していたが,BRG1ノックダウン細胞では,Nrf2への影響は認められなかった.一方,Nrf2ノックダウンによりBRG1のリクルートは消失した.上記のテトラサイクリン誘導性Nrf2発現細胞を用いて,Nrf2標的遺伝子座へのNrf2と相互作用因子のリクルートを検討している.さらに,Nrf2およびFLAGに対する抗体を用いて,Nrf2変異体の核内局在を検討しているところである. 3.DEMに応答するレポーター遺伝子の作製:RNAiライブラリーを用いて,Nrf2の親電子性物質応答に関与する因子をスクリーニングするために,ヒトとマウスNQO1およびHO-1遺伝子のARE配列を含むプロモーター領域に緑色蛍光タンパク質遺伝子またはチミジンキナーゼ遺伝子を連結したレポーター構築を作製した.これらレポーター構築を安定導入した細胞を作製した後に,スクリーニングを開始する予定である.
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