研究課題
TORC2は細胞質と核の間を移行することによりCREBの転写調節活性を制御している。これまでの研究ら、SIKがTORC2の複数のSerをリン酸化することでTORC2を核から細胞質に移行させ、結果的にCREB活性を負に制御することを明らかにした。本年度はCIEBを脱リン酸化する機構を解明した。脱リン酸化酵素カルシニューリンがTORC2のC-末端付近のSerのリン酸基を脱リン酸化させる可能性が別のグループにより示唆されているが、我々の結果ではカルシニューリンはTORC2の中心付近に作用し、C-末の脱リン酸化には関与しなかった。またTORC2のC-末端は細胞内局在に影響を与えないことからも、中心付近のリン酸化-脱リン酸化現象が重要であると考えられる。中心付近のSerの全てについてそれぞれをAlaに置換したところ、Ser307AlaではTORC2は核外移行しなかった。ホスホSer307を認識する抗体を作成して解析した結果、ホスホSer307はカルシニューリンで脱リン酸化を受けることが明らかとなった。アデノウイルスを用いてカルシニューリンを発現させたところ、カルシニューリンそのものはCREB活性に影響を及ぼさなかった。この結果はSer307の脱リン酸化によりTORC2は核内に移行してもCREBの活性化は起こさないことを示す。次にTORC2の活性性化とリン酸化の時間依存性を検討した。活性化の指標として、副腎皮質でCREB依存的な発現をするアルドステロン合成酵素の遺伝子発現の変化を追跡した。副腎皮質細胞株H295RをCa^<2+>処理すると、4時間後にアルドステロン合成酵素の遺伝子発現が起こった。TORC2-Ser307の脱リン酸化は1時間以内に起こっていた。カルシニューリンの阻害剤であるシクロスポリンで前処理すると、TORC2は細胞質に留まり、アルドステロン合成酵素の遺伝子発現は起こらなかった。この時TORC2-Ser307はリン酸化されたままであった。以上の結果、カルシニューリンによるSer307の脱リン酸化はTORC2の核内移行を起こすために必要であるが、CREBの活性化には十分な条件ではないことが明らかとなった。
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Mol.Cell.Endocrinol. 265-266
ページ: 196-204
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