研究概要 |
生理的な細胞死はアポトーシスとtypeII細胞死(オートファジー様細胞死)に大別される。オートファジーは、栄養飢餓などの際に、自らの細胞内成分を分解し恒常性を維持しようとする、生に貢献する現象であるが、この現象が異常に亢進すると、細胞が崩壊してオートファジー様細胞死に至ると考えられている。これまでに我々は、アポトーシス機構が何らかの原因で破綻した際には、それを代償する為にオートファジー様細胞死機構が働くことを示してきた。本研究は、これらの知見を更に進めて、オートファジー様細胞死の分子機構を解明し、その生理的意義や疾患病態における関与を明らかにする、ことを目的としている。 (1)オートファジー様細胞死に関与する分子を網羅的に同定し、分子機構の全体像を明らかにする。 アポトーシス機構が破綻している細胞にアポトーシス刺激を加えると、オートファジー様細胞死が観察できる。この細胞死に関与する分子を網羅的に同定する為に、3種類のスクリーニング系(ribozyme library,ShRNA library, Gene Chip)を駆使して解析を行なってきた。これまでに、いくつかの候補遺伝子を同定しており、これらの分子の関与を検討中である。 (2)オートファジー関連分子APG5のノックアウトマウスとアポトーシス促進分子Bax/Bakのダブルノックアウトマウスを交配する。トリプルノックアウトマウスは胎生致死であり、現在胎児期の異常を検証中である. (3)臨床の癌組織におけるオートファジー関連分子の遺伝子変異を同定し、発癌や癌の悪性化における関与を探索する。 外科手術時に摘出される癌を用いて、オートファジー関連遺伝子の変異の有無と癌の悪性度、予後、他の遺伝子変異(特にアポトーシス関連遺伝子)との関連を検討している。現在症例の蓄積中であるが、オートファジーに異常のある癌が相当数散見されている.
|