我々は、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(nonsense mediated decay; NMD)の生理的な働きの一つとして、選択的スプライシングによりエクソン化されたAlu配列をはじめとする分散型高頻度反復配列を含むmRNAを認識、破壊することにより、これら反復配列が蛋白のアミノ酸配列に入り込むことを防いでいるのではないか、との仮説を立てた。本研究では、薬理学的手法およびRNA干渉を用いて、NMDを特異的に抑制したヒト細胞株を用いて、その細胞の転写産物の解析を行うことにより、NMDがAlu配列を含むスプライシング変異体mRNA(ASV)の除去に必須であるかを検証することを目的とする。これまで1.NMD抑制によるAlu配列を含むエクソンの顕在化の検証一既知遺伝子での限定的解析2.高発現型Alu配列エクソンを持つADARB1遺伝子導入実験を行った結果、Alu配列がエクソン化された選択的スプライス変異体の発現量はどの遺伝子についても非常に低いこと、そしてNMD抑制による発現の変動が限定的であることがわかった。すなわちこれらASVにはNMDによるmRNA除去を受けづらい、何らかの分子機構が備わっていると考えられた。これを明らかにするために、これらのASVのエクソンおよびイントロンの塩基配列構造用いて、選択的スプライシングの効率を検討した。これらの結果より、ASVの発現の抑制にはNMDのみならず、様々な因子が関わっていることが示唆された。
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