研究課題
アレクサンダー(Alexander)病は、アストログリアの異常に起因することが明かとなった唯一のヒト遺伝病である。臨床的には、脳室の拡大を伴う巨脳症(水頭症)、痙攣、精神運動発達遅延、痙性四肢麻痺を示し、主に乳児期に発症する。2001年に米国のグループによって、Alexander病がアストログリア特異的に発現するグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)遺伝子の変異により生じることが報告された。乳児期発症型は進行性で予後が悪く、発症後数カ月から数年で死亡し、病気の進行を止める有効な治療法は見つかっていない。病理学的には、特徴的なローゼンタール線維(Rosenthal fiber)がアストログリア内に凝集体として出現する。Rosenthal fiberは、生化学的及び免疫電顕によって成分解析がなされ、GEAPの他にαB-crystallin、HSP27、ubiquitinが主要成分であることなどが明らかにされている。本研究では、Alexander病と同様の変異型体を導入し、Rosenthal fiberの性状特性と病態形成との関連を解析できる疾患モデルマウスを作製する。疾患モデルとしての解析は、発症週齢、生存期間、臨床所見(巨脳症・痙攣・運動発達・麻痺など)、病理所見(光顕・電顕)、Rosenthal fiberの性状特性(生化学的分析)及び行動特性などについて解析し、有効な治療法が見つかっていない本疾患の遺伝子治療に向けての基礎的知見の集積を目指している。本年度は、Alexander病におけるGFAPの変異型体に対応する変異マウスの作製を目的として、乳児発症型として最も多くの症例が報告されている変異型であるR239Cの単独変異、このR239C変異との重複によってその病態の軽症化に関連している可能性があるP47Lとの重複変異を導入したジェノミックコンストラクトを作成用の129Svマウスに由来するジェノミックDNAライブラリーより野生型GFAP遺伝子クローンを分離し、特定の変異を導入後、ターゲティングベクターを作製した。今後は、マウスES細胞に導入し、組換えコローンの選別をする予定である。
すべて 2006
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Journal of Clinical Neuroscience 13 (9)
ページ: 934-938