アレクサンダー(Alexander)病は、アストログリアに特異的に発現するグリア線維性酸性タンバク質(GFAP)の異常に起因するヒト遺伝病である。Alexander病では、変異GFAPの代謝不全によう細胞内封入体であるRosenthal fiberの蓄積が最も特徴的な病理形態学的所見である。本研究課題遂行中に米国の研究グループにより、同一のストラテジーによって変異マウスが作製され、Rosenthal fiberの性状特性と病態形成との関連について報告がなされた。そこで、研究の方向性に若干の修正を加え、変異GFAPの代謝不全にまっわる問題を解明するため、当該変異マウスについて電顕形態学的解析ならびに行動学的解析に主眼をおいた共同研究を開始するに至った。電顕形態学的解析においては、野生型あるいは変異GFAPの存在下、またはGFAP欠損下でのアストログリアの反応特性を明らかにするため、まず、申請者が作製したGFAP欠損マウスにおいて、プリオン感染時に誘導される反応性グリオーシスの定性および定量的解析を行った。その結果、GFAP欠損下でも、アストログリアの膨化、GFAP以外のフィラメントタンパク質であるビメンチンの発現上昇といった反応性グリオーシスが誘導されることを見出したが、細胞の膨化程度と突起伸長度が野生型に比べ有意に減少していることがわかった。また、野生型に比べ、細胞の増殖形態を反映すると思われるPiredcells形成が顕著に充進していた。
|