本研究計画は、消化管特異的に発現するホメオボックス転写因子CDX2及びCDX1の消化管腫瘍における役割を解明し、新たな治療法開発の手がかりを見つけることを目的とする。これまでに、改良型のChIP(Chromatin immunoprecipitation)スクリーニング法を用いて、CDX1及びCDX2の新規標的遺伝子候補としてSLC5A8及びPLEKHG1を同定した。SLC5A8のコードするタンパクは、短鎖脂肪酸を細胞内に取り込むトランスポーターで、大腸癌の癌抑制遺伝子候補として報告されている。前年度までに、ヒト大腸癌細胞株HCT116にCDX1またはCDX2を強制発現させるとSLC5A8の発現が誘導されること、ChIPスクリーニングで同定された領域のCDX結合配列がその発現制御に関与することを示した。今年度は、大腸癌細胞株T84でCDX2をノックダウンするとSLC5A8の発現が減少すること、HT29細胞とCaco2細胞において酪酸ナトリウムがSLC5A8の発現を誘導することを見出した。一方、PLEKHG1がコードするタンパクは、Rho/Rac/Cdc42ファミリーの低分子量GTP結合タンパクに対するGEF活性を持つDblファミリーに属する。今年度は、大腸癌細胞株HCT116及びDLD1にCDX2を強制発現させることによってPLEKHG1の発現が誘導されること、T84細胞株でCDX2のノックダウンによりPLEKHG1の発現が低下すること、Caco-2細胞株の分化誘導系において内在性CDX2の発現上昇に伴いPLEKHG1の発現が増加することを見出した。また、DLD-1及びHCT116細胞株にPLEKHG1を一過性に発現させたところ、filopodia様構造の形成を伴う形態変化が観察された。
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