研究概要 |
本年度は、ヒト鼻粘膜上皮細胞とタイト結合の調節機構を中心に行った。 1.初代培養ヒト鼻粘膜上皮細胞におけるタイト結合の制御機構 初代培養ヒト鼻粘膜上皮細胞にTPAを処置したところ、6時間後では非処置群と比較して4倍のTER上昇およびFITC-dextranの透過性の抑制がみられた。このときタイト結合分子は、Western blot法においてclaudin-1, occludin, ZO-1, ZO-2の増加がみられ、RT-PCR法ではclaudin-1, -4, occludin, ZO-1, ZO-2の増加がみられた。免疫染色ではTPA処置によりoccludin, ZO-1, ZO-2が細胞膜での増強がみられた。凍結割断レプリカ法ではTPA処置により非処置群に比較し、より発達したタイト結合構造物が認められた。TPA処置によりPKC isozymeのうちnovel PKC-δ, θ, εの発現増加がみられ、PKC阻害剤でTPA処置によるバリア機能およびタイト結合分子の増加の抑制がみられた。今回の検討は、ヒト鼻粘膜上皮のPKCを介したバリア調節機構を解明したばかりでなく、今後の感染防御の戦略や新しいdrug delivery systemの開発の可能性を示唆するものであることがわかった。 2.hTERTを感染させることにより、ヒト鼻粘膜上皮細胞を安定的に培養する技術を確立した。この細胞は、初代培養細胞と同様に、タイト結合蛋白claudin-1, -4, -7, occludinの発現が確認された。種々のサイトカインに対するタイト結合の反応や各種Toll-likeレセプター(TLR)のリガンドに対するタイト結合機能の変化を検討し、PKCによってタイト結合機能が亢進すること、TLR-2刺激でTSLPの発現が亢進することが明らかになった。またTSLPがヒトアレルギー性鼻炎で発現が上昇していることを明らかにした。一方、樹状細胞はヒト鼻粘膜にも存在しかつclaudin-7を発現し、TSLPで発現が上昇することが明らかになった。これらの結果は、タイト結合がアレルギー性鼻炎の発症機構に関与し、またその機能調節機構をアレルギー性鼻炎の治療に応用できる可能性を示している。
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