研究概要 |
本研究では、タイト結合の分子制御機構を明らかにし、種々の疾患の病態解明を目指し研究した。 1.タイト結合の形成とその機能維持に重要な核内転写因子であるHNF-4αが、上皮細胞における微絨毛形成のモルフォゲンであるとの位置づけを確立した。 2.網膜における特異的な組織構築に着目し、グリア細胞由来のサイトカインが、網膜血管の透過性を調節している可能性を提案してきた。この概念を発展させ、レチノイン酸を用いたグリア細胞の形質修飾により、糖尿病網膜症の初期状態で起こる血管透過性の亢進を抑制することに成功した。 3.hTERTを感染させることにより、ヒト鼻粘膜上皮細胞を安定的に培養する技術を確立した。この細胞は、初代培養細胞と同様に、タイト結合蛋白claudin-1,-4,-7,occludinの発現が確認された。種々のサイトカインに対するタイト結合の反応や各種Toll-likeレセプター(TLR)のリガンドに対するタイト結合機能の変化を検討し、PKCによってタイト結合機能が充進すること、TLR-2刺激でTSLPの発現が充進することが明らかになった。またTSLPがヒトアレルギー性鼻炎で発現が上昇していることを明らかにした。一方、樹状細胞はヒト鼻粘膜にも存在しかつclaudin-7を発現し、TSLPで発現が上昇することが明らかになった。これらの結果は、タイト結合がアレル・ギー性鼻炎の発症機構に関与し、またその機能調節機構をアレルギー性鼻炎の治療に応用できる可能性を示している。 4.我々は、ビタミンD受容体欠損マウスの小腸のタイト結合蛋白発現の解析と、ビタミンD依存性にCaを吸収することが明らかになっているCaco-2細胞を用いて、タイト結合蛋白claudin-2と-12が、Caのパラセルラー経路による吸収に重要な役割を演じていることを明らかにした。このことは、Ca吸収不良や骨粗しょう症の治療に貢献する可能性がある。
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