研究概要 |
単一細胞の細胞死や細胞生存に関する分子メカニズムは、細胞内シグナル伝達機構の解析により急速に明らかにされつつある。しかし,多細胞より構成される臓器に発生するヒトの病態を考えるとき,細胞傷害の過程で、細胞死や生存に関するシグナルが細胞間で伝達されるか否か、また、細胞間コミュニケーションの中心的担い手であるギャップ結合とその構成蛋白質であるコネキシンの細胞死や生存における役割は不明である。それは、細胞集団の中で、特定の細胞間のみのコミュニケーションを阻害する方法や、特定の細胞のみに細胞傷害を誘起する方法が存在しなかったことが大きな理由である。本研究でわれわれは、培養細胞内でギャップ結合を可視化しながら、細胞間コミュニケーション機能を任意の領域でしかも任意の時点で特異的に阻害する方法を、多光子chromophore assisted laser inactivation(CALI)を用いて実現した。ギャップ結合蛋白質であるコネキシン43(Cx43)と蛍光蛋白質のenhanced green fluorescent protein(EGFP)の融合蛋白質を恒常的に発現するHeLa細胞株を用いた。Cx43-EGFPで形成されたギャップ結合プラークの構造をイメージングしながら、その機能をパッチクランプ法で測定した。Cx43-EGFPギャップ結合プラークに種々のパワーで850nmのレーザを一点照射し、EGFPを2光子励起した。7.8mW以上のレーザを照射したところCx-EGFPは退色し、ギャップ結合は不活性化され、15.7mWではギャップ結合細胞間コミュニケーション機能が約400msのレーザ照射で80%以上低下した。
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