研究概要 |
単一細胞の細胞死や細胞生存に関する分子メカニズムは、細胞内シグナル伝達機構の解析により急速に明らかにされつつある。しかし,多細胞より構成される臓器に発生するヒトの病態を考えるとき,細胞傷害の過程で、細胞死や生存に関するシグナルが細胞間で伝達されるか否か、また、細胞間コミュニケーションの中心的担い手であるギャップ結合とその構成蛋白質であるコネキシンの細胞死や生存における役割は不明である。 本研究でわれわれは、シグナル分子が、細胞傷害の過程で、ギャップ結合細胞間チャネルを介して周囲の細胞に伝達されるか否かを明らかにすることを目的とする。 その解明の起点として、今回我々は、細胞傷害の系として、ラット心筋梗塞モデルを用いて、梗塞心における心筋細胞及び非心筋細胞でのギャップ結合蛋白質コネキシン(Cx)の発現を免疫組織学的に検索した。冠状動脈結紮後5日目の心筋梗塞境界部において、Cx43を発現する非心筋細胞が見出され、そのなかにはα-smooth muscle actin(α-SMA)陽性の細胞が存在し、それらのCx43及びα-SMA陽性非心筋細胞が心筋細胞に接して存在する像も観察された。心筋細胞の近傍に存在するCx43及びα-SMA陽性細胞には、第8因子関連抗原陽性の内皮細胞と接する平滑筋細胞及び、内皮細胞から離れて存在するmyofibroblastが観察され、それらの非心筋細胞が、心筋細胞とギャップ結合コミュニケーションを行う非心筋細胞の候補と考えられた。
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