研究概要 |
Trypanosoma congolenseはT.vivaxより高いドースのアスコフラノンが必要なことが感染マウスを用いた予備実験において確認されている。本剤を用いたアフリカトリパノソーマ治療薬実用化のため感染ヤギを用いた実験の前に感染マウスを用い血中濃度を高く維持するために溶解剤の検討を行った。溶解剤としてマクロゴール、水溶性リン脂質ポリマーPUREBRIGHT MB-37-50Tを用いアスコフラノンの最大溶解濃度を比較検討した。その結果50%マクロゴール-PBS(10mg/ml),5%PUREBRIGHT MB-37-50-PBS(30mg/ml)で完全に溶解が見られた。溶解したアスコフラノンを投与した感染マウスはPBS-Tween20に懸濁した場合より治癒効果の上昇がみられた。さらに、ナイロビにある国際家畜研究所(ILRI)では培養系に適応したT.congolenseを維持していることから培養原虫、マウス感染原虫両間におけるアスコフラノンの感受性に関しても検討した結果、マウス感染原虫の治癒には200mg/kg必要とするのに対し培養原虫では2ng/m1と非常に感受性が高いことがわかった。両原虫を形態学的に比較してみると感染原虫は非分裂型のずんぐり型が多数観察されるのに対し培養原虫は高い増殖能をもつ細長型のみであることからミトコンドリアの呼吸酵素が異なることが示唆された。実験動物感染原虫ではチトクローム系も発現している可能性があるのに反し培養原虫ではシアン耐性呼吸依存性が高いことが示唆された。各種のアスコフラノン誘導体を用い酵素学的、培養原虫を用いた生物学的効果を行ったが未だ天然物であるアスコフラノンに勝る誘導体は見つかっていない。シアン耐性呼吸酵素はT.b.brucei, T.vivax, T.congolense, T.b.rhodesienseからクローニングされ大腸菌を用い有効な大量発現系の確立が検討された結果すべてのトリパノソーマ由来の酵素が酵素活性を維持したまま精製される様になった。今後アスコフラノンとの作用部位などをエックス線解析により検討する段階に入りつつある。
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