研究課題/領域番号 |
17390123
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
青木 孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (20053283)
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研究分担者 |
奈良 武司 順天堂大学, 医学部, 講師 (40276473)
橋本 宗明 順天堂大学, 医学部, 助手 (30407308)
案浦 健 順天堂大学, 医学部, 助手 (90407239)
坪内 暁子 順天堂大学, 医学部, 研究員 (10398662)
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キーワード | トリパノソーマ / アポトーシス抑制 / cDNAチップ / c-FLIP / 原虫の生残り / ピリミジン合成遺伝子 / 塩基置換頻度(SNPs) / 海草抽出物 |
研究概要 |
細胞内寄生原虫Trypanosoma cruziは哺乳類細胞に侵入するとdeath receptorを介するアポトーシスを抑制し、生き残りをはかる。その分子メカニズムの解明に向けて、ヒトのアポトーシス関連遺伝子(164個)を備えたcDNAチップを用いて、T.cruzi感染細胞および非感染細胞(コントロール)間で発現パターンを比較した。感染細胞において特にanti-apoptotic遺伝子の転写レベルの上昇が重要であり、中でも哺乳類で唯一知られているdeath receptor経由細胞死の阻害因子c-FLIPの役割を追究すべきと考えられた。In vitro感染細胞、そのコントロールおよび感染マウス(in vivo)心筋におけるc-FLIPの動態について、ノーザンプロット、ウェスタンブロット、免疫沈降法、RNA干渉法、免疫蛍光組織化学法等で解析し、細胞死抑制による原虫の生き残りにc-FLIPは必須の役割を果たすことが示された。シャーガス病の原因として、宿主における本原虫の長期生存が重要であるという報告からみて、本研究成果の意義は大きいと考えられる。 この研究と平行して、トリパノソーマ類におけるピリミジン生合成経路第4酵素DHODの生物学的意義、分子進化、薬剤標的としての可能性について解析した。DHOD遺伝子欠損株の解析から本酵素はT. cruziの生存に必須であり、ピリミジン生合成のみならず原虫内の酸化還元バランスを保つ(フマル酸還元活性による)ために必須の役割を果たすことが明らかになった。T.cruziは株によってDHOD遺伝子を3〜5コピーもち、コピー間の塩基置換頻度(SNPs)は真核生物一般の頻度よりもきわめて高い。Tulahuen株では3コピー間で26ヶ所にSNPsを認めたが、発現タンパク質間では酵素反応定数などに大きな相違はないことから、3酵素を個別に考えずに薬剤開発に進める点は有利である。Tulahuen株の組換え酵素rDHODを用い、その活性測定系に各種海草抽出物を添加してスクリーニングした結果、2種の褐藻抽出物が高い活性阻害を示し、T.cruzi-HeLa細胞感染系に対しても顕著な抗原虫効果を与えた。次年度は以上の研究をさらに進展させる予定である。
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