研究課題/領域番号 |
17390123
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
青木 孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (20053283)
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研究分担者 |
奈良 武司 順天堂大学, 医学部, 講師 (40276473)
橋本 宗明 順天堂大学, 医学部, 講師 (30407308)
案浦 健 順天堂大学, 医学部, 助手 (90407239)
坪内 暁子 順天堂大学, 医学部, 助手 (10398662)
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キーワード | トリパノソーマ / マイクロアレイ / リアルタイムPCR / 増殖促進因子のdownregulation / 増殖抑制因子のupregulation / cFLIPのユビキチン化 / アポトーシス抑制 / ピリミジン合成遺伝子 |
研究概要 |
T.cruziは感染細胞内で分裂・増殖することから、宿主細胞因子に依存または積極的に利用していると考えられるが、分子レベルでの解明はほとんどなされていない。今回我々は、約47,000個の転写産物を含むマイクロアレイを用い、感染細胞HeLaの遺伝子発現を解析した。感染細胞と非感染細胞を比較し、3倍以上upregulateされた遺伝子41個、downregulateされた遺伝子23個を認めた(p<0.05,n=3)。また、マイクロアレイデータの信頼性はリアルタイPCRにより確認した。上記の64個の遺伝子にはIL6、IL8などのサイトカインや細胞増殖に関わる遺伝子の割合が高かった。興味深いことに感染細胞では、細胞増殖促進因子7個はすべてdownregulateされ、細胞増殖抑制因子3個はすべてupregulateされていた。すなわちT.cruzi染細胞の増殖速度は著しく低下し、原虫の持続感染が保障されるメカニズムの一端が明らかとなった。 この現象と深くかかわり、T.cruziが感染すると宿主細胞のアポトーシス抑制因子cFLIPを大量に蓄積させ、アポトーシスを強く抑制する。このことは本原虫の宿主体内における生き残り、したがって病原性からみても非常に重要である。細胞内cFLIPタンパクの発現量は、転写およびユビキチン(Ub)-プロテアソーム分解系のバランスによって決定される。今回、我々は感染細胞におけるcFLIPのUb化について調べた。抗UB抗体による免疫共沈タンパク質に対して抗cFLIP抗体によるウエスタンブロッティングをおこなったところ、Ub化されたcFLIPタンパクは感染細胞の方が非感染細胞よりも有意に少なかった。このことは、T.cruzi感染によりcFLIPのUb化が特異的に阻害されており、したがってcFLIPが蓄積しアポトーシスを抑制する(原虫は生き延びる)ことを示している。 さらに、トリパノソーマ類に特異的なピリミジン生合成第4遺伝子および第6-第5融合遺伝子の分子進化を追跡する目的で、祖先型生物群diplonemidsの第4、第5、第6酵素遺伝子の解析をおこない、これら遺伝子のキネトプラスチダ類、特にT.cruziに至る起源および進化について興味深い結果を得た。
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