研究目的 近交系が確立され、遺伝子操作が可能なラットにHIV/HTLV-1が感染できるならば、治療法と予防法の開発に大いに役立つ。既に、我々はヒトCRM1を発現させたラットT細胞でヒトT細胞に匹敵するHTLV-1の増殖を観察している。また、上皮細胞株にHIV plasmidを導入すると、ヒト細胞に準じるHIV粒子が生産されることを示した。そこで今年度はヒトCRM1発現トランスジェニックラットを作成してHTLV-1の増殖を検討するとともに、ラットT細胞株におけるHIV-1の増殖に必用なヒト因子と抑制因子をさらに検討し、同定された因子を発現するTgラットを作成することを目的とした。 研究成果 hCRMI1 Tgラット由来のT細胞でHTLV-1がヒトT細胞と同程度に増えた。ラットT細胞でのHIV-1の増殖はhCRM1とhCyclinT1の単独発現では数倍の増強にすぎないが、共発現によって数十倍の相乗的な増強が見られた。ヒトCD4/CCR5/CRM1/CyclinT1の4種を発現するラットT細胞ではヒトmolt4CCR5の1/3〜1/10のp24が生産された。又、ラットには2種類の阻害因子があることが示唆された。hCCR5/hCXCR4を発現するTgラットを作成した。 考察 hCRM1 Tgラット由来のT細胞でHTLV-1が良く増えたので、次にラット生体にHTLV-1を感染させて増殖を調べるべきである。又、ラットT細胞株を用いてHIV-1の増殖に必用なヒト因子としてCRM1以外にCyclinT1を同定した。さらに、阻害因子の存在を示唆した。従って、HIV-1感受性のラットを作成するためには、hCRM1とhCyclinT1を発現し、阻害因子をノックダウンしたTgラットを作成する必用がある。
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