研究概要 |
EBウイルス(EBV)のBリンパ球への吸着はCD21をレセプターとし、EBVのgp350をリガンドとする。しかし、上皮細胞はCD21の発現が全く無いか、発現していても極めて低く、上皮細胞へのEBVの感染機構は殆どわかっていない。 20種類の上皮細胞で、EBV感受性と高感度RT-PCRによるCD21発現を調査し、ヒト胃上皮由来のAGS細胞がもっとも高いEBV感染効率を示し、CD21を発現していないことを証明した。そこで、AGS細胞のmRNAからレトロウイルスcDNAライブラリーを作製し、Expression cloningの方法で、上皮細胞におけるEBVレセプターの分離を行うことにした。 遺伝子発現クローニング法に用いる標的細胞の選択は、実験の成否を左右するため、慎重に行った。まず、元来はEBV感染に抵抗性であるが、CD21を発現させることで、EBV感染に高度に感受性となる細胞を探索した。ラットのc-SST-2細胞、イヌのMDCK細胞、ヒトのHeLa細胞が、元来はCD21陰性であるが、同分子の発現により、EBV感受性に変化することを発見した。しかし、c-SST-2細胞とMDCK細胞は、100,000細胞に一個以下の頻度ではあるが、非特異的にEBVに感染することより、バックグラウンドを全く認めない、HeLa細胞がcDNAクローンを導入発現させる標的細胞として適していることが明らかになった。 以上より、HeLa細胞を用いてレセプターのクローニングを開始することにした。まず、作製した10,000、000クローンサイズのcDNAライブラリーを10、000クローンのプールに分けてレトロウイルスを作製した。それぞれのプールのレトロウイルスをHeLa細胞に感染させ、さらにネオマイシン抵抗性遺伝子とGFP遺伝子を組み込んだ組換えEBVを感染させた後、G418による選択を行い、EBV感染HeLa細胞クローンを分離した。現在、得られた10個のcDNAについて解析を行っている。
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