研究課題
基盤研究(B)
重粒子線照射を利用し、HIV-1などヒトレトロウイルスや肝炎ウイルス(HBV、HCV)の感染への影響、特に細胞侵入への影響を解析し、ウイルスの感染機構を解析した。粒子線としては、He, C, Neイオンを用い、その対照としてUV, X線/γ線,各種薬剤を用いた。ウイルスとしては、まずHIV-1について解析を行った。ウイルス感染の標的細胞としては、ヒト由来のC8166細胞およびNP-2/CD4/CCR5細胞(NP-2細胞にCD4およびCCR5遺伝子を導入した細胞)、HBVの感染したAlexander細胞、HCVレプリコンを持つHuh-7細胞などを用いた。細胞に異なる線量の重粒子線を照射しHIV-1を感染させた。重粒子線で照射した細胞では、逆転写されたウイルスDNAの量が増加した。比較的高い線量での照射ではそのような増加は見られなかった。細胞へのHIV-1結合量には違いは見られなかった。これらの結果は、比較的低い線量の重粒子線照射によって、細胞のHIV-1粒子取り込み、あるいは逆転写の効率が上昇する可能性を示唆した。HTLV-1の感染しているC8166細胞では、重粒子照射によりNFkBの増加が見られた。しかし、HTLV-1のTaxの発現には影響がなく、細胞のHTLV-1感染感受性にも変化が認められなかった。HBV感染細胞では重粒子線照射によりウイルス抗原量が増加する傾向が見られた。HCVレプリコン保有細胞の照射では、そのレプリコン数には大きな影響を与えなかった。重粒子線照射した細胞では、CD133 mRNAの発現の増加が見られた。また、NFkB mRNAの発現も比較的低い線量で若干増加が見られた。一方、histon deacetylase、Ku-80、poly-ADP ribose polymeraseなどの発現は低下した。以上の放射線照射細胞のウイルス感受性の解析から、重粒子線照射は、X照射や紫外線照射では見られない影響(特にHIV-1感受性の亢進)が見られることが明らかとなった。一般に重粒子線照射の効果は、X線照射よりただ生物学的効果(Relative biological effect : RBE)の程度が大きいだけのように考えられているが、重粒子線照射には、他の放射線照射とは質的な違いがあることが示唆された。
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