研究概要 |
我々は、マウスレトロウイルス感染時にウイルス中和抗体産生の有無を制御する非MHCの宿主遺伝子Rfv-3を、第15染色体上にマッピングし、これと相同なヒト22染色体領域の遺伝子が、HIV-1曝露非感染者における効率的なT細胞感作と粘液抗HIV抗体産生に関与する可能性を示してきた。マウスゲノムでもヒトゲノムでも、これらレトロウイルス感染抵抗性遺伝子マップ領域内には、レトロウイルスゲノムの塩基置換を誘導するシチジン脱アミノ化酵素、APOBEC群が存在している。特にヒトのAPOBEC3G,APOBEC3Fは、HIV複製時に粒子内に取り込まれ、逆転写後のウイルスゲノムに変異を加えることにより、感染性粒子の複製を抑制する作用が知られている。 そこで、HIV-1曝露非感染状態の成立にヒトAPOBEC3が関与する可能性を考え、HIV-1曝露非感染者及びHIV感染者末梢血と子宮頸部粘膜における、APOBEC3群mRNA及びタンパク質の発現を解析した。曝露非感染者では、HIV感染者に比較して末梢血単核球でのAPOBEC3G,3F発現が構成的に高く、インターフェロン-α刺激時にはさらに有意な発現上昇が見られた。しかし、この発現上昇にはIL-15は関与していなかった。また、曝露非感染者の子宮頸部粘膜でも、HIV感染者に較べAPOBEC3G,3Fの発現が上昇していた。 これに加え、マウスレトロウイルス感染におけるAPOBEC3遺伝子の関与を解析した。組織・細胞別の解析で、マウスAPOBEC3がBリンパ球、Tリンパ球で強く発現すること、赤芽球系細胞では発現が弱いこと、マウスの系統により、スプライシングパターンの違うmRNAが検出されることを見出した。現在、フレンド白血病ウイルス感染に対するマウスAPOBEC3の抑制効果をin vitroとin vivoの両方で解析中である。
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