本申請研究では、クロマチンレベルでの調節を行って転写記憶(transcriptional memory)に関与すると言われるポリコームやトライソラックス遺伝子の作用機序やGATA3を含むクロマチンリモデリング複合体の各ユニットの同定と機能制御機構を解明することを目的として研究を行った。特に、メモリーTh2細胞でのTh2サイトカイン遺伝子座とGATA3遺伝子座におけるクロマチン制御に注目して解析を行った。トライソラックス遺伝子であるMLL分子のノックアウトマウスでは、メモリーTh2細胞の機能のみが選択的に維持できないことが明らかになった(Yamashita et al. Immunity 2006)。ポリコーム遺伝子であるBmi1分子のノックアウトマウスでは、エフェクター細胞までは分化できるものの、アポトーシスが亢進しているためにメモリーT細胞ができないことが分かった。アポトーシスを誘導するBH3 only proteinであるNoxaが直接Bmilのターゲット遺伝子であることが明らかになった(Yamashita et al. J. Exp. Med. Inpress)。"Initiation and Maintenance of Th2 Cell Identity"という総説に於いて、新たな分子機序によるメモリー細胞の形成、機能維持に関するコンセプトを発表した(Nakayama and Yamashita. Curr. Opin. Immunol. In press)。また、GATA3を含むクロマチンリモデリング複合体の同定・機能解析、GATA3遺伝子座でのポリコームとトライソラックス遺伝子によるクロマチン制御などの研究を行った。
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