1)造血幹細胞・リンパ球前駆細胞の増幅分化を制御するLnkファミリー蛋白質の作用機構の解明: Lnk欠損によりc-Mp1依存性反応の亢進とともに重合アクチン量の低下がみられた。Lnk欠損B細胞では種々のケモカインに対する遊走能が上昇しており、fibronectinやVCAMへの接着が充進していた。Lnk依存性制御系の障害により細胞外基質との相互作用に影響が生じると考えられた。無血清培養系を用い、Lnk欠損造血幹細胞ではTPO依存性の増殖が亢進していること、正常では起こらないTPO単独刺激での自己複製がみられることを明らかにした。Lnk欠損によって生じる造血幹細胞の増加及び機能亢進が、トロンポポイエチン欠損下では大きく軽減することをLnk/TPO重複欠損マウスを作成することで確認した。 2)リンパ球初期分化のチロシンキナーゼ依存性制御シグナルとその標的遺伝子群の解析: Btk/RAG2重複欠損pro-B細胞において、刺激前よりRAG2欠損pro-B細胞と比べて発現量に差がある遺伝子、抗Igβ抗体刺激により誘導がかからない遺伝子をピックアップし、血前駆細胞で過剰発現させ、ストローマ細胞との共培養系や免疫不全マウスへの移植系よりB細胞分化・成熟に果たす影響を解析し、B細胞分化を促進する転写因子を同定した。 3)免疫系再生制御の基礎技術開発と臍帯血由来ヒト免疫担当細胞解析への応用:造血系再構築に極めて有用と思われるLnk依存性抑制系の阻害法を開発した。造血幹細胞及び前駆細胞の生着、長期骨髄再建能の増強効果について検討し、免疫不全動物モデルの免疫系再構築に有用であることを証明した。ヒト臍帯血前駆細胞での効果検討するため、ヒトLnk阻害分子を作製した。
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