研究概要 |
目的:Tリンパ球が小腸組織に特異的ホーミングするようインプリントする因子の分子実体がレチノイン酸であることを我々は発見した(Immunity 21:527,2004)。本研究では、レチノイン酸以外の、あるいはレチノイン酸との組合せで、小腸とは異なる組織特異性をインプリントする新規因子を探索し、その分子実体を同定することによって、リンパ球ホーミングの乱れが関与する疾患の制御や予防に向けた新たな方法論確立のための基盤を構築することを目的としている。 結果:活性型ビタミンD_3の1α,25-dihydroxyvitamin D_3(VitD3)には、レチノイン酸が小腸特異的ホーミングをインプリントする作用の一部を阻害する能力があり、皮膚へのホーミング特異性獲得を一部促進する傾向があることが判明した。VitD3生成の最終酵素25-hydroxyvitamin D_3-1α-hydroxylase(CYP27B1)に対する抗体を作成して、CYP27B1の組織と細胞での分布を解析中である。T細胞を活性化する際にVitD3,甲状腺ホルモンT3,peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR-γ)アゴニストなどを作用させて、発現が増加または減少する遺伝子をマイクロアレイを用いて解析した。特に、各種インテグリンやケモカイン受容体の発現への影響が明らかになった。また、転写調節に関与すると思われる遺伝子なども検出できた。さらに、それらの経時変化によって発現制御を受ける遺伝子についても解析中である。 考察:レチノイン酸以外にも、核内受容体リガンドの中に、異なるホーミング特異性を賦与する因子が存在する可能性が考えられた。本年度は本研究の初年度であったが、研究拠点を移動し、課題解決のための準備を進めることができた。
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