研究課題/領域番号 |
17390153
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
粟屋 剛 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20151194)
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研究分担者 |
加茂 直樹 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (10027691)
霜田 求 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90243138)
佐藤 純一 高知大学, 医学部, 教授 (70295377)
許 南浩 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70173573)
長田 浩 兵庫県立大学, 看護学部, 助教授 (60316049)
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キーワード | ヒトES細胞 / ヒト胚 / 人間の尊厳 / 医療テクノロジー / 人体資源化 / 人体商品化 / 再生医療 / 倫理的地位 |
研究概要 |
人体商品化の前提として人体資源化があるが、今年度はとくに今話題となっているヒトES細胞の資源化に着目し、ヒトES細胞の医療資源化と「人間の尊厳」の関係について生命倫理の視点から分析した。そして、概略、以下のような結論に達した。 ヒトES細胞は、社会的、法的に「物」ではあるが、尊厳あるべきヒト胚由来のものである(人間の胚を原材料として作製される-胚の破壊を伴う-という意味においてではあるが)から、その程度は別にして、丁重に取り扱われる必要がある。では、ヒトES細胞が個々の場面において(物理的、心理的に)丁重に取り扱われるならば、その研究利用行為自体は抽象概念としての「人間の尊厳」を侵害しないのかどうか。ここで、人間の尊厳は、平たくいえば、「人間を人間以外のものとして扱ってはならない」という倫理規範である。また、ここでの「人間」は、直接的には一個体としての人間が想定されている。したがって、ヒトES細胞をどのように研究利用しようが、それは「人間」に対して何らかの行為をなすわけではないので、少なくとも直接的には、それが人間の尊厳を侵害するとはいえない。しかし、この「人間を人間以外のものとして扱ってはならない」という倫理規範には、「人間由来のものを単なる物、ひいては資源として扱ってはならない、まさに人間由来のものとして扱うべし」という規範も含まれる、あるいは、前者から後者が派生する、と考えることができる。そうだとすれば、ヒトES細胞の研究利用行為はまさにそれを資源として扱う行為であり、人間の尊厳を、その程度は別として、原理的に侵害する(掘り崩す)と考えざるをえない。しかし、だからといって、それが非倫理的であるとまではいえない(倫理評価4段階説によれば、功利主義的な利益衡量により、倫理的に「容認されうる」と評価される)。 なお、上記の点について、研究代表者である粟屋剛は平成18年3月9日に岡山で開催された再生医療学会倫理シンポジウムにおいて、「ヒトES細胞の研究利用は人間の尊厳を侵害するか」と題する報告を行った。他に、粟屋剛は、ヒトES細胞自体に尊厳性ないし倫理的地位はあるか、という問題について分析し、それらはありえないという結論に達した。これは、粟屋剛「ヒトES細胞に尊厳はあるか」再生医療第4巻第4号(2005年)91-96頁(研究成果欄再掲)に述べている。
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