研究課題
胃腺粘液細胞型ムチンは、両生類以上の鳥類を除く脊椎動物の胃粘膜腺粘液細胞に限定して発現するムチンで、1978年、研究代表者の勝山により始めて発見された。1996年、共同研究者である北里大学石原らのグループにより、このムチンに対するモノクローナル抗体HIK1083が開発され、特徴的な糖鎖末端構造も明らかにされた。また、信州大学グループにより、この糖鎖の合成に関わる糖転移酵素α4GnTの遣伝子も単離された。本年度は、以下の検討を行った。石井恵子は、HIK1083を用いたラテックス凝集法による胃腺粘液細胞型ムチン測定系を開発し、頚管分泌物内の腺粘液細胞型ムチンの検出による悪性腺腫の診断に応用してきた。本年度は、胃癌あるいは卵巣癌患者の腹水中の腺粘液細胞型ムチンの検出に加え。胃型肺癌の診断を目指して、気管支洗浄液中の腺粘液細胞型ムチンの検出に成功した。したがって、HIK1083を利用した腺粘液細胞型ムチン検出キットの開発により、少なくても両疾患の確定診断に有用な手法が期待される。太田は、胃液中の腺粘液細胞型ムチンのEIA法による測定法の開発を行った。本年度は,この測定系を用いて、健常人の胃液中の腺粘液型ムチンの基準値とH.pylori感染患者における胃液中の腺粘液細胞型ムチン量の増加を報告した。勝山と佐野は、電顕レベルで、ヒトの生検例5症例について、H.pyloriが接着する上皮細胞の種類を、1083による免疫染色を併用しつつ精密に同定した。その結果、H.pyloriは腺窩上皮に主として接着しているものの、従来の予想とは異なって、細胞の腺腔表面にHIK1083に反応する糖鎖を発現している細胞にも少数ながら接着していた。したがって、H.pyloriの増殖を阻害するためには、遊離型の糖鎖が必要ではないかと推測された。
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