[目的] ヒトの自己免疫疾患の病態規定因子と考えられる免疫調節因子、特にサイトカインの機能的な遺伝子多型と病態との関係を明らかにし、自己免疫疾患全般に共通する重症度や難治度を予測するための予後検査診断法を開発することを研究目的とした。 [方法および結果] 疾患対象には、自己免疫性甲状腺疾患を選択した。 免疫応答を調整するTh1系及びTh2系サイトカインのサイトカイン産生量を規定する遺伝子多型(一塩基多型SNP)を解析し、橋本病の重症度やバセドウ病の難治度と比較して、臨床的意義の有無について調べた。 Th1系サイトカインとして、インターフェロンγ(IFN-γ)遺伝子+874A/T SNP(TアリルでIFN-γ産生量が多い)、インターロイキン2(IL-2)遺伝子-330T/G SNP(GG genotypeでIL-2産生量が多い)を調べ、Th2系サイトカインとして、IL-10遺伝子-1082A/G SNP(GアリルでIL-10産生量が多い)を解析した。 その結果、IFN-γ遺伝子+874A/T SNPは、Tアレル頻度が、橋本病重症群で軽症群に比し有意に高かった。このTアレルの頻度の差は、抗サイログロブリン抗体(TgAb)陰性の橋本病においてより著明であったが、TgAb陽性橋本病では有意差は認められなかった。バセドウ病では差はなかった。IL-2遺伝子-330T/G SNPは、橋本病の重症群やバセドウ病の寛解群でGアリルが多い傾向が認められた。IL-10遺伝子-1082A/G SNPは、橋本病・バセドウ病の重症度や難治度では差がなかったが、橋本病ではGアリルが少なく、バセドウ病ではGアリルが多い傾向が認められた。 [結論] 自己免疫疾患の病態規定因子として免疫応答を調節するサイトカインの遺伝子多型を調べることにより、自己免疫疾患の予後を予測できる可能性が示された。
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