研究概要 |
成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)発症の分子機構は不明な点が多い.他の造血器腫瘍に比較して,染色体遺伝子異常が非常に複雑なためである.染色体分染法による解析では,第14染色体長腕(14q),とくに14q11と14q32に切断点の集中することが示されている.多色蛍光染色体解析(multicolor spectral karyotyping, SKY)法を用いて45例のATLLと7例の細胞株の染色体解析を行った.染色体切断点として14q11.2(13例)と14q32.1(12例)には構造異常が高頻度に認められた.その中でもFISH法により4例においTCRα/δ遺伝子領域近傍に切断点を確認した.その4例においては染色体異常,切断点ともに交通している可能性が高く,2例においは,long distance・PCRによって作した約10kbの長さのプローブを用いたFISH法で切断点をTCRα/δ遺伝子領域の中に特定できた.同時に行ったゲノムアレイ解析でもFISH法で得られたデータと相関する結果が得られた. また,転座相手と考えられる14q32においては,FISH法において14q32.2に存在するBCLllB近傍に切断点を確認した.T-ALLにおいては,inv(14)の存在する症例でTCRδとBCLIIBの融合の報告があり,これらの症例についてはTCRα/δとBCLl1Bの両者の関係が示唆された.ATLの症例についてTCRαとBCLIIB, TCRδとBCLl1Bの融合の可能性を予想しRT-PCRを行ったが,さまざまに設定したプライマーセットのいずれでもキメラ転写産物は検出されなかった.現在これらの遺伝子の本転座への関与についてさらに詳細な解析を進めている.
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