研究概要 |
強力な神経毒であるメチル水銀の今日的課題の一つは、胎児期の低濃度曝露の出生後の発達への影響である。ただし、ヒトでの実際の曝露では、メチル水銀に加えPCBsなど環境残留性の化学物質もまた環境中で生物濃縮され、主に魚摂取により人体に取り込まれる。このためメチル水銀曝露は常にPCBsとの複合曝露の形態をとる。そこで、低濃度のメチル水銀とPCBsの複合曝露影響を解析するため、マウスを用いる動物実験を実施し、次世代影響をオープンフィールド試験、水迷路試験、自発行動量などの神経行動学的手法を用いて解析を実施した。 曝露に関する実験条件を決定するため。PCBsとしてAroclor 1254を使用し、トウモロコシ油にPCBを溶解させ、妊娠6日目から産後20日まで3日毎に経口投与により与えた。濃度は文献情報を参考に6,18,54mg/kg/dayとし、神経行動学的な指標を測定した。その結果、18ないし54mg/kg/dayの条件で影響が認められたが、PCB曝露の至適濃度としては影響が明瞭に観察される54mg/kg/dayが適当と考えられた。 ついで、メチル水銀との複合曝露実験を開始した。メチル水銀は餌に添加し、妊娠4週間前より与え、出産により普通餌に交換した。現在のところ、曝露実験を進め行動学的な指標による検索を実施中である。また、予備実験で得られた試料中のPCBs異性体の化学分析をGC/MSにより進めている。
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