研究課題/領域番号 |
17390168
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
菅沼 成文 福井大学, 医学部, 助教授 (50313747)
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研究分担者 |
日下 幸則 福井大学, 医学部, 教授 (70135680)
伊藤 春海 福井大学, 医学部, 教授 (40026943)
石崎 武志 福井大学, 医学部, 教授 (80151364)
村田 喜代史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20127038)
久永 直見 愛知教育大学, 保健管理センター, 教授 (90111856)
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キーワード | 石綿関連肺がん / 非悪性石綿関連疾患 / 悪性中皮腫 / 建築業 / 低線量CT / 腫瘍マーカー / 高分解能CT / 分類 |
研究概要 |
石綿の健康影響として中皮腫と少なくとも同数以上あるはずの石綿関連肺癌、非悪性石綿関連疾患の頻度については十分な検討がなされていない。本研究では石綿関連疾患の頻度調査と悪性疾患の早期発見プロトコルの完成を目指している。 通常の胸部CTでは10mGy程度の被曝があるため、非悪性疾患のみを標的とした石綿曝露健常人を対象とするCT検診は倫理的問題がある。われわれは石綿曝露のある集団において、年齢、喫煙歴を考慮して試験的に肺癌および非悪性石綿関連疾患を標的とする低線量CTスクリーニングを実施している。約3000名の建築業関係者の同業者組合会員の中でCTスクリーニング参加希望者を募り、16列マルチディテクタ(MD)CTを用いて低線量(25mAs,2mGy未満)腹臥位撮影を行い2mm厚で採取した情報を2mm厚のthin-sliceと7mm厚のthick-slice画像に再構成しそれぞれ非悪性疾患と悪性疾患の検索を行った。初年度は100名の参加を得て、精密検査を要する肺癌疑いが3名、フォローアップを必要とする小結節影が数例発見された。また、右綿関連非悪性疾患の発見も胸部単純に比べ高率である。2年目である18年度は180名の参加を得て、肺癌疑いが3名で既に1例は手術が終了している。 また、石綿曝露者の悪性腫瘍として重要な悪性胸膜中皮腫はCT検診での検出はかなり難しいと考えられることから、N-ERG/mesothelinおよびosteopontinを腫瘍マーカーとして検討をレているところであり、中間結果を日本産業衛生学会および2007年の米国胸部学会で発表する。これによるとosteopontinについては肺癌症例についてもを高値をしめすことがわかった。N-ERC/mesothelinにっいては現在検討中である。 今後、石綿曝露者を対象に毎年の肺癌を標的とした低線量CTスクリーニシグを導入するのならば、いかなる基準(業種、期間、喫煙)によって対象を決定し、どのようなプロトコール(25-50mAs、MDCTあるいはCT+HRCT)で行うかについての合意形成が必要である。CT検診の費用は現状では一人当たり10000円から15000円程度であり集団検診として導入するのであれば低価格化が必要であり、また、費用負担を誰が行うのか検討を要する。また、追跡間隔についても十分な合意形成はなされていない。一方、悪性中皮腫を標的とすると、CT検診での早期発見は難しい。今後、腹膜中皮腫も合わせてSoluble mesothelin-related protein, osteopontinなど血清腫瘍マーカーを用いたリスク集団の絞り込みを行った上で、CTを含めた適切な検査方法により検出するなど早期発見のプロトコル確立が急務である。このように、肺癌を含む石綿関連疾患に感度の高いCT検診導入には対象とする高リスク集団の明確化が不可欠であり、総合的に進めることが重要である。
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