研究概要 |
この研究において、キネティクスとダイナミクスの種差が大きく、かつその毒性発現が核内受容体PPARαに依存している化学物質の代表として、プラスチック可塑剤のフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(以下DEHPと省略する)を選択し、マウス型PPARα(mPPARα)-マウスとhPPARα-マウスおよびPPARα-nullマウスを用いて、18年度はDEHPの発がん性の種差とPPARαの役割を検討するための実験を継続した(実験は継続中である)。また、mPPARαとhPPARαのプラスチック可塑剤による転写活性化の差異を検討し、両者の機能の違いを検討した。DEHP, DEHA(アジピン酸ジエチルヘキシル),DBP(フタル酸ジブチル)を0、2.5、5.0mmol/kgをmPPARαマウスとhPPARαマウスに14日間投与し、PPARαの標的遺伝子発現をウエスタンブロット分析と定量リアルタイムPCR法を用いて検討した。DEHP, DEHA, DBPすべてのプラスチック可塑剤はPPARαを解したペルオキシゾームおよびミトコンドリアのβ酸化系酵素発現を誘導していた。その程度はmPPARαマウスの方が若干強かった。この傾向は蛋白発現においてもmRNA発現量においても観察された。これらのマウスのPPARα発現量は同じと報告されている。従って、今回得られた結果はmPPARαとhPPARαはその転写活性化において明らかに機能の差があることを示す。この結果はマウスとヒトのPPARαは機能が異なることを直接示すものであり、プラスチック可塑剤の毒性の種差に関連するかもしれず、重要な知見である。
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